【稽古場ブログ3月7日】コロナウイルスで延期という選択!

【稽古場ブログ3月7日】コロナウイルスで延期という選択!

皆さんこんにちは。
劇団ながらびっと主宰の森永健太郎です。

今回の稽古場ブログは、私が担当させて頂きます!

さて、稽古場ブログと言ってもこの日は劇団にとって忘れられない日となりました。

というのも、コロナウイルスの影響で公演の開催不可と通達があった日なのです。

その時感じた思いや葛藤を、出来る限りこのブログに残したいと思います。
どうぞお付き合い下さいませ。

まず簡単にご説明すると、今回の公演は2/29、/3/1開催の大阪公演(HEP HALL)3/14、3/15開催の兵庫公演(AI・HALL)の2会場公演でした。
出演者も会場によって大幅に変わるダブルキャストです。

この日は1週間前に開催された大阪公演を終え、1週間後には兵庫公演を控えてたという本番と本番に挟まれていた日。
大阪公演の刺激だったり、焦りだったりで、出演者の熱気は最高潮に高まっていた気がします。

ちなみに大阪公演は、手前みそではありますがむちゃくちゃ良かった。
想像を超える反響でした。大阪公演を見てもう一度兵庫の方も見たい!という方も結構いました。

ゆえに、想像を下回れないという焦りの方がやや強く、このラスト2日間の稽古は非常に重要でした。
※働きながらがコンセプトの社会人劇団なので、稽古は土日のみ。
僕も「あのシーンもやらないと」「このシーンはもっと磨ける」と、少しでも良い作品になるよう準備を進めてました。

そんなこんなで当日の朝。
電車の乗る直前に、劇場から「取り急ぎお知らせしたい事があるので電話下さい」とメールがありました。
こんなご時世です。もう嫌な予感しかしません。

急いで電話をすると、その予感通りでした。
「コロナウイルスの影響で、3月末まで休館します」との事。

まあガクンとなりました。
もちろんある程度は覚悟していた事ではあります。
しかし、いざ宣告されると、結構きます。

これは市が決めた事なので、電話口の方に頼み込んでも、文句を言っても仕方ない。
ただただ「わかりました」としか言えないこのもどかしさが、正直本当に悔しかった。

とりあえず目の前の電車に乗りはしたものの、

「とりあえず誰に伝えればいいのか。」
「みんなになんて伝えよう」
「もう本番はできないのか?」
「お金は?」
「今からの稽古は?」

ぐるぐる色んな感情が周り、それでも意外に冷静な部分もあり、
気が付くと出演者には稽古が遅れる旨の連絡を、技術スタッフには取り急ぎ開催不可の報告を、そして選択肢を作らねばと、
別会場の空き状況や、延期ができないかの可能性を探っていました。

この時の電車はむちゃくちゃ濃密な時間でしたが、全く覚えていません。
もう一瞬でした。

ただ、電車を降りてから稽古場までの徒歩10分の距離は、物凄く長かった。
なんて伝えようかとか、みんなの悲しい顔を見るのすごく嫌だなとか、泣き出す人がいたらどうしようとか、絶対苦しい時間になるよなぁと。
正直すごくすごく怖かった。

少し遅れて稽古場に入った時、既にみんなは自主的に稽古をしていました。
当然です。やる気に満ちていました。

そんな中みんなを集め、早々に開催不可の話をしました。
皆、最初は沈黙で、重たい空気が流れました。

しかし、意外にもそんな空気もほんの5分ほど。
話は即座に今後の話になりました。とりあえず何ができるのか、どうしたいのか。

そこから午前中は、ひたすら可能性の話をしました。
ありがたい事に、みんな大人で、誰一人不満を漏らさず、泣き言も言わず、前しか見ていなかった。

僕は勝手に不安に思っていただけで、みんなは想像よりもっとずっと強かった。

冷静に、メリットとデメリットを天秤にかけ、そして「ただやりたい」というだけの考えに走らず、お客様にとって何が良いのかを踏まえ、
加えて情熱はしっかり持っていて。
現実的に何ができて、何ができないのかを検討し、他の日程や劇場をその場にいる全員で洗い出しました。

僕らの強みは、色んな職業の人がいる。色んな角度で話合える。
それが本当に本当に心強くて、絶望だと思っていたこの状況で「嬉しい」と思う部分がありました。

 

そして午前中には、現実的になんとかいけるのでは?という目処も立ち、
7月頃に【延期】という方向性に決まりました。


うーん、素晴らしい!

そして一旦お昼を挟もうとした時、
とりあえず来週の本番がなくなるのは確定したので、午後からどう過ごすかをみんなに投げました。

ここで僕にとって、この日1番驚いた事があります。

それは「え?稽古するでしょ?」と返答があった事。

僕はぶっちゃけ、本番まで3カ月も先になるし、ここで解散もありかなと思ってました。
目の前の公演が一度ふっとび、それぞれの色んな感情があるでしょうし。

しかし、みんな稽古をしたいと言うのです。

これって普通なんでしょうか?
僕はすごい事だと思います。
みんな、純粋に良いものを作りたいと、みんなお芝居が好きなんだと思いました。

そんなわけで午後から、少しでも作品を良くしようと普通に稽古に励みました。


逞しいですよ。本当に。

もう既に、真剣な空気な中に時折冗談も交えて笑い声も響いてました。
誰一人暗い顔をしていなかった。
「くよくよしたって仕方ない!やってやるぞ!」の空気一色でした。

そしてもう一つ驚いた事。
それは、今回大阪公演にしか出ないメンバーも、当然のように稽古に来ていました。
自分の出演はもう終わっているのにです。
そして一緒に延期対策や今後について真剣に話合ってくれました。

これだけでも、なかなか普通の事じゃない。

そして公演が延期になるので、当然稽古の日程も延長になりました。
時間が空くので一旦は休みを取りますが、5月の中旬くらいから再開しようと話をしていると、
大阪公演メンバーも当たり前のように追加の稽古日程を手帳に書き出し、「何時から何時までですか?」とか聞いてくれる。
当然のように参加するつもりでいてくれました。

もう一度言いますが、自分の出演は終わっているのにです。

大阪しか出ないメンバーの一人が言いました。
「全然終わった気になんかなってない」

この公演は、2つで1つなのだと。
出ないメンバーも、気持ちは1つなんだと。
もちろん全員が全員ではないかもしれません。
ていうか僕は結構ドライなので、自分の出番が終わっていれば気持ちが離れていたかもしれない。

でも、そうじゃない人がこんなに多いんだなって。
作品に対し、劇団に対し、同じ仲間に対し、強い愛を感じました。

稽古場に来るのに、交通費だって時間だってかかります。
ほんの4カ月前に出会ったばっかの人も沢山。
たった数ヶ月で、1つのチームになり、結束を感じました。

この日は、本当に多くの感情が交差しました。
なんだかんだで、しっかり夜まで稽古や話合いは続きました。

 

今回のコロナウイルスの影響で、幸運だと思った事が3つあります。

1つめは、大阪公演を終えた後だと言う事。
この大阪公演の成功が、作品に対しての自信が生まれ、これをやらないなんて勿体ない!と思えた事。
自分達は、面白い事をやっているんだと自信と勢いがあった。成功のビジョンと感動体験が「中止」という迷いを吹き飛ばた。
また観劇して下さったお客さまの声も、本当に背中を押してくれました。
大阪公演のアンケートは、まさに宝です。

 

2つめは、物理的に延期はなんとかできそうという事。
どれだけ気持ちが高くて、開催する場所がなければどうにもならない。
ちなみにHEP HALLとAI・HALLは年内は全て埋まってました。
大体劇場は1年前くらいには抑えるもの。
延期が1年後とかになったら、それこそ気持ちを保てないし、お客さんも待ってはくれない。

でも、奇跡的にギリギリなんとか条件を満たせそうな劇場が1つ見つかりました。
その日程であれば、その場にいたメンバーも調整できるのではないかと。

劇場は変わるので少し狭くなり、大きな調整は必要です。
出演者の中には、まだ予定がわからずなんとか出れないかと調整してくれる人もいます。
何かが欠けるかもしれないし、やりたかった形を変えないといけない部分もあるかもしれない。

でも、思いをぶつける先が見つかりました。
これは本当に幸運でした。

 

3つめは、開催不可が判明したのが、稽古日だったという事。
みんなに直接伝え、直接相談できたことは、本当に本当に大きかった。

もしこれが水曜とかだったら、おそらくLINEでみんなに伝え、家で一人でどうしたらいいかを悩み、落ち込んでいた。
確実に心は折れていたと思います。
顔を見て、すぐに反応があって、同じ熱量で「やろう!!」と力強く言ってくれるメンバーには本当に心強かった。

 

正直、もう中止にしようかと思う気持ちもありました。
お芝居は、公演本番日に向けて全てを費やすもの。楽しい事ばかりじゃない。
泣いても笑っても3月15日には全てが終わる…!と、ギリギリの精神でやっていた部分もありました。

フルマラソンで、ゴールテープが目前でぴゅ~と風に飛ばされる感覚。
もう一回走ればいいというのは、そんな単純な話ではないです。

全部ポイと投げてしまう方が、楽な部分もあります。
もう一度状況を立て直し、打ち合わせを重ね、熱を取りもどすのは簡単な事ではありません。

お金だって延期とは言え、何十万という損失がありました。
色んな準備も無駄になったし、これからの課題も増え、しばらくは対応に追われそうです。
正直悔しいですよ。辛いですよ。

でも僕らは、結果的にもう一度走る選択をする事に。

辛いと言ってもお芝居が好きなんですよ。結局ね。
一緒に走ろうと言ってくれるメンバーがいるなら、どうせなら焦らず景色を楽しみながら走ろうじゃないかと。

やってやります。
せっかくやるなら、何かプラスになる要素をどんどん探し、不幸を幸運に変換してやるつもりで。
作品だって時間ができちゃったんだし、より磨いてもっと面白くします!

 

そんな思いを込めて、ご予約頂いていたお客様に中止の旨をご連絡をしました。

ほとんどのお客様が、「応援してます」「絶対に観に行きます」「中止ではなく延期で良かった」と、
言って頂けました。

本当に、痺れます。
泣きますよ。これは。

 

3年前に生まれた「劇団ながらびっと」
最初はもちろん劇団員なんてものはなく、誰も知らない、一回きりかもしれない小さな劇団。

気が付くと、心強い仲間と、多くの方に応援して頂ける劇団になっていたのだと、実感しました。
この劇団は、最高です。

 

この日の夜に、メンバーの何人かからLINEをもらいました。
その中で「このケースにおいて、最善の形で進んでいると思う」という言葉をくれました。

間違いない。
これ以上になく、今ここからできる最善の選択をしています。

そんなわけでアイマイ・アンドロイド。
7月まで引き続きよろしくお願い致します。

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最後に。
多くの劇団の公演が、そしてイベントが中止になっているこのご時世。
それが当たり前になって麻痺してしまいそうですが、どれだけ多くなって「その他大勢」にはなりません。
開催できなくなった催し1つ1つに、それぞれドラマがあり、強い思いやこだわりがきっとあるはずです。
我々のように、ぶつけようもない憤りや辛さ、悔しい思いをした方は多いはず。
応援しております。頑張りましょう。乗り越えましょう。

読んで頂き、誠にありがとうございます。

劇団ながらびっと
森永 健太郎

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